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プロジェクトレポート

必要を抱えたホロコースト生存者たち

文:レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

近年、物価が高騰するイスラエルでの生活は、わずかな年金で暮らす高齢者にとってはたやすいことではありません。
ホロコーストを経験した生存者の方々に尊厳ある晩年を送っていただくため、BFPも活動を続けています。

BFPはホロコースト生存者に食料支援を行っています
All photos by bridgesforpeace.com

「あと10年や15年もすると、ホロコースト生存者の方々はほとんどいなくなってしまうでしょう。彼らのお世話ができるのは今しかありません」。こう語るのは、高齢者に対する重荷とビジョンを抱くエレツさん。わずかな財源を用いて、イスラエルの高齢者向けに手ごろな価格の住宅を提供する事業の責任者です。これまでに7千人の高齢者に安全で快適な住宅を提供してきました。入居した大半の高齢者は、旧ソ連から帰還してきたホロコースト生存者の方々。残念ながら戸数が限られているため、今もなお2万7千人の方々が公営住宅に住むことを切望し、入居の扉が開かれるのを待っています。

18年末の統計によると、イスラエル在住のホロコースト生存者は22万1千人。高齢化はますます進み、体も弱り、生存者の数は毎月減り続ける一方です。ホロコーストが終わりを告げたのは1945年。当時若者だった生存者たちは、言語を絶する恐怖と胸が張り裂けんばかりの心の痛みを経て、今、人生の最終章にいます。

BFP(ブリッジス・フォー・ピース)は、愛をもって多くのホロコースト生存者の方々を支援し、食料を届け、一人暮らしの孤独な生活を明るく照らし、彼らの手となり足となり、その必要を満たしてきました。このような活動を続けられることは、本当に光栄なことであり、特権だと実感しています。

私たちが支援する貴重なホロコースト生存者の一人に、シェリーさんという女性がいます。彼女は夫と共にイスラエルに移住し、互いに愛し合い、語り合い、相手の存在から強さと安らぎを得てきました。私たちBFPは、彼らの自宅に置かれた空の食器棚を満たし、食卓を彩る食べ物を提供し、愛すべきこのご夫妻の黄金時代を可能な限り快適にすることを目指しました。

シェリーさんにとって親しい友であり、慰めの源であったご主人が亡くなったのは、約1年前のこと。BFPの配達リストに登録されていたのはご主人のお名前だったため、彼女はBFPからもう食料を受け取れないのではないか、寒い冬の数カ月を空腹と恐怖におびえながら過ごすことになるのではないか、と嘆いていました。そんな不安を抱えるシェリーさんに、私たちは伝えました。「BFPはシェリーさんのために存在しているのです。かつて私たちに頼ってくださったように、これからもどうぞ頼り続けてください」。彼女にほっとした表情が見えた時、私たちも喜びを感じました。

手づくりのブランケットを喜ぶシェリーさん
Photo by bridgesforpeace.com

寡婦となったシェリーさんには、これまで以上に多くの助けが必要です。BFPのボランティアたちがご自宅を訪問し、玄関のドアをたたくと、彼女はいつも“お願いリスト”を持って待っています。高齢となった彼女一人ではできないこと、かつてはご主人が担当していたことのリストです。シェリーさんの願いに答えられることは、何という特権でしょう。

先日シェリーさんにお届けした食料袋には、いつもより多くの物を入れました。加えて、おいしいお菓子と、オーストラリアのクリスチャンが手づくりした美しいブランケットの入った誕生日バスケットを添えて―。晩年も一人ぼっちではないことを、今シェリーさんは体験しています。BFPと世界中のクリスチャンのおかげで、愛とサポート、生活の糧と交わりを得ているのですから。

第二次世界大戦後、多くのホロコースト生存者はイスラエルにやって来て、生計を立て、家庭を築きました。一方で終戦後、旧ソ連に閉じ込められたまま過ごさなければならなかった方も大勢います。ついにイスラエルに帰還する扉が開かれた時、大勢の人々が押し寄せてきました。帰還したホロコースト生存者(多くはロシア語話者)のグループは、高齢で、準備金を持っていない人も多く、多大な支援を必要としています。イスラエルに来たことで、在住国から受け取っていたわずかな年金(日本円にして通常月額9千円未満)も支払われなくなりました。イスラエルが彼らに提供する年金(生活保護)は月額800ドル(日本円にして約9万円未満)。暮らしていくのに十分な額とは言えません。修理が必要で、わずかな設備しかないアパートであっても、家賃は月額1千ドル以上(日本円で11万円以上)します。多くの場合、高齢のホロコースト生存者たちは、5〜6人でこうした小さなアパートに同居し、何とか家賃を支払っている状況です。

イスラエルはこの問題を解決しようと、助成金を出して全国に高齢者向け住宅を建築し、困難な状況を打破しようと努力しています。高齢者夫婦向けには寝室が一つ付いたアパート、単身者向けにはワンルームアパートを提供。入居者が負担するのは月額75ドル(日本円にして約8千円)と光熱費だけでOKです。こうした支援により、高齢者たちは限られた年金を医療費や食費に回すことが可能になります。私たちが訪れたエルサレムの高齢者向け住宅は、小さいながらも設備が整っていて、きれいなアパートでした。入居者の尊厳を大切にし、必要に応じて援助もしてもらえます。

こうした新しい建物に掛かる費用は、イスラエル政府とユダヤ機関が82%を負担しますが、残りの18%は世界の支援者からの助けが必要です。BFPもその支援を求められています。1部屋の建築費は約750万円です。

今こそ、ホロコースト生存者に愛を示す時です。シェリーさんのように、生存者の多くは移民で、一人で暮らしており、忘れることのできないホロコーストの記憶と共に生きています。これらのうちの一つであっても、克服することは簡単ではありません。ホロコーストのトラウマに対処することは想像を絶します。BFPはそんな彼らを愛し、食料やプレゼントを届け、アパートを修理し、訪問することに全力を傾けてきました。次は、彼らが尊厳と安心感をもって暮らせるよう、家を提供するお手伝いをしたいと願っています。

「ホロコースト生存者のために」プログラムに寄せられる皆様からのご支援は、クリスチャンの愛と気遣いを、これからも彼らに示し続けていくでしょう。「まことに、あなたがたに言います。あなたがたが、これらのわたしの兄弟たち、それも最も小さい者たちの一人にしたことは、わたしにしたのです」(マタ25:40

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