文:ピーター・ファスト(BFP 国際会長・CEO)
新年は大半の人にとって喜びの季節です。
一方、一人暮らしのホロコースト生存者にとっては孤独な季節。
私たちは特別ギフトと共に、愛と尊厳をお届けします。
Manami Nakamichi/bridgesforpeace.comBFP(ブリッジス・フォー・ピース)のボランティアたちが、エルサレムにある小さなアパートを後にしようとした時、後ろから呼び止められました。
昨年のロシュ・ハシャナー(ユダヤ新年)の出来事です。ゆっくりと歩み寄ってきた高齢のご夫婦は、私たちが渡したばかりの祝祭用の特別ギフトを返してきました。二人の顔には明らかに困惑の色が浮かんでいました。
「申し上げにくいのですが……」。ご主人は意を決したように口を開きました。「代わりに食料を頂けませんか」
彼らは、私たちが毎月の食料の代わりに特別ギフトを持ってきたと考えたようです。たとえ新年という特別な日であっても、彼らには食料を失うリスクは冒せません。
BFPボランティアは彼らの手を握って優しく答えました。「どちらか一方だけではないので安心してください。毎年この時期は、食料と特別ギフトの両方をお渡ししているのです」
その言葉を聞いた時の彼らの表情を今でも忘れられません。まず安堵(あんど)が浮かび、次にその頬を涙が伝いました。そして彼らは、私たちの贈り物を再び腕に抱き締めてくれたのです。
ホロコースト生存者がどんな思いを抱いているのか、すべてを物語る出来事でした。
ある人々が恐れる季節
イスラエルは9月、素晴らしい季節を迎えます。夏のうだるような暑さが和らぎ、秋に降る初雨が町のほこりを洗い流してくれます。街角には鮮やかな赤いザクロの実がたわわに実り、ユダヤ新年を待ちわびるかのようです。秋に訪れる三大例祭、「ロシュ・ハシャナー」「ヨム・キプール」(大贖罪日)、そして喜びに浸る「スコット」(仮庵の祭り)の準備が進むにつれ、国全体が静かな期待感に包まれます。
多くの人々にとって、この季節は今までを振り返り、新たな気持ちで再出発し、家族と共に過ごす喜びの時です。豊かなごちそうを囲み、甘い新年を願ってリンゴを蜂蜜に浸して味わいます。
しかし、多くのホロコースト生存者にとっては、一年で最も孤独を感じる時です。既に家族全員が他界したという人も少なくありません。国中が家族との集まりに心を向ける時、彼らは空席の食卓を前にし、その多くは経済的な困窮を抱えてこの祝日を迎えます。
その一人、ヴィオレタさんは何十年も前、人生を決定付けるある決断を下しました。「私は子どもを持たない」。少女時代にホロコーストを生き抜き、常に飢えが付きまとう日々を過ごした彼女にとって、子どもを生んでも養えないかもしれない事態は耐え難かったのです。晩年を迎え、既にそのような危機は過ぎ去ってもなお、「欠乏」への恐怖は完全に消えることはありません。
エリザベータさんは、BFPボランティアがドアを開けて入ってくると、いつも目を輝かせます。90歳を過ぎ、かつて流暢(りゅうちょう)に話していた英語ではなく、今では母国語のロシア語で話すことが増えました。たとえ言葉が分からなくても、そばに座り、その手を握り、彼女を見守っていることを行動で伝えることが訪問の真の目的です。そうするだけで彼女の目には涙が浮かびます。
おしゃべり好きなローザさんは、私たちが訪ねるたびに喜んで話をしてくれます。内容は同じ事の繰り返しであっても、私たちはまるで初めて聞くかのように耳を傾けます。耳を傾ける行為自体が愛だからです。一日の大半を静寂の中で過ごす彼女にとって、自分の話を聞いてもらえることは、私たちが持参する蜂蜜と同じくらい甘い贈り物なのです。
祝祭の季節に贈る蜂蜜とパン
このような季節こそBFPの出番です。私たちは例年、秋の祝祭を前に新年のお祝いの蜂蜜を届けます。さらに、栄養価の高い主食や特別なスイーツを詰め合わせた「祝祭用食料パッケージ」も一緒にお届けします。このシーズンを心から喜び祝えるようにとの願いを込めた贈り物です。
今年は、既に支援を受けている方々だけでなく、さらに多くの方に支援を届けたいと考え、エルサレムとカーミエルに住むホロコースト生存者2千名に「蜂蜜」を、1300名には「祝祭用の食料一式」をお届けしました。
毎月の食料は、ホロコースト生存者の命綱ですPhoto by Chloe Kaltoum/bridgesforpeace.com
ホロコーストで意図的な飢餓を強いられた人々にとって、食料がぎっしり詰まった袋を手にすることは決して些細(ささい)なことではありません。パンや油、蜂蜜を受け取り、感極まって言葉を失う姿を何度も目にしてきました。飢えは何十年たっても消えない傷を残します。私たちが届ける蜂蜜の一つ一つは、痛んだ心の奥深くに直接語り掛けるものなのです。
食べ物以上のもの
純粋な信仰とは「孤児ややもめたちが困っているときに世話を(すること)」だとヤコブは記しました(1:27)。ホロコースト生存者はその両方に該当します。彼らは、家族を奪われた最後の生き証人であり、再び戦渦に巻き込まれたこの国で孤独に暮らす人々です。
「困窮者支援」へお捧げいただくことで、私たちはホロコースト生存者の方々の食卓を豊かにできます。彼らにとって欠乏が身にしみる祝日となるのか、温かさと尊厳に彩られ、誰かが自分のことを思ってくれているという確信に満ちた祝日となるのか、私たちは今、その分岐点にいます。
本当に大切なのは、食べ物の背後にある祝福です。人生の黄昏を迎えた今も、自分たちが忘れられていないという事実こそが重要なのです。
ぜひ皆さんのお力を貸していただけないでしょうか。「困窮者支援」への寛大なご支援をお願いいたします。この新たな始まりの季節を、彼らが心から歓迎できるように支えましょう。
孤独の中で暮らすホロコースト生存者へのご支援は「困窮者支援」をご指定ください。
ご入金方法は、下記バナーよりリンク先をご覧ください。
※銀行またはゆうちょダイレクトからの送金の際は、必ずご連絡くださいますようお願いいたします。


















